傷ついたからといって、誰もが暴力をふるう人になるわけではありません

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連続殺人を、ひとつの傷やひとつの性格で説明できるのでしょうか?

「連続殺人犯ももとはいい人だったのに、子どものころに受けたひとつの傷のせいで殺人犯になった」といった言い方は、複雑な暴力をあまりに単純にしてしまいます。深刻な犯罪行動には、いくつもの要因が働くことがあります。育つ過程で受けた虐待やネグレクト、性格の特性、衝動を抑えることの難しさ、暴力を正当化するゆがんだ考え、脳や心の健康の問題、お酒や薬物の使用、まわりの環境、犯罪を犯す機会といったものです。これらの要因は、人によって違うかたちで絡み合って働くことがあります。

こうした危険要因のどれかひとつだけで、人が犯罪を犯すようになるわけではありません。虐待を受けた子どもの大部分は連続殺人犯にはならず、精神疾患のある人の大部分も暴力的ではありません。特定の傷と犯罪をすぐに結びつけると、傷ついた人や精神疾患のある人に不当な烙印を押すことになります。

表向き親切な人は暴力をふるわないと信じてよいのでしょうか?

連続殺人犯について「もとはいい人だった」と言うとき、それはまわりの人の目に、その人がいい人に見えていたという意味です。けれども人は、職場や近所づきあいでは礼儀正しくふるまいながら、家族や恋人のような身近な人には支配や暴力をふるうことがあります。相手が誰と会うのか、お金をどう使うのかまで握って振り回すのが、そうした支配です。このように外で見せる姿と身近な人にする行動が違う人について、「本当はいい人なのに、傷が悪い行動を生んだ」と結論づけることはできません。表と裏がこれほど違いうるのですから、その人が本来いい人かどうかを問うよりも、実際にどんな行動をしたのかを具体的に見る必要があります。

危険を判断するときは、印象よりも繰り返される行動を見なければなりません。脅しやつきまといをしていないか、動物や人を傷つけていないか、暴力を計画していないか、武器を手に入れられるか、責任を被害者に押しつけていないか、相手がいやだと言ったことを無視して押し通していないかを確かめる必要があります。そして、こうした行動がだんだんひどくなっていないかも見なければなりません。こうした危険のサインを見せる人がいるなら、ひとりでその人を説得したり、治療者の役を引き受けたりしようとしてはいけません。それより先に、二つのことを用意する必要があります。危険なときにどこへ逃げ、誰に連絡するかを決めておく安全計画と、警察や暴力被害の相談機関などの専門機関の助けです。

原因を理解することと、責任を問うことは、いっしょに進められるのでしょうか?

子どものころの傷が感情の調節や人間関係のつくり方に影響したという説明は、犯罪を許そうとする言葉ではありません。被害者を守り、再犯を防ぐには、二つのことがいっしょに必要です。ひとつは、罪を犯した人に、自分で選んだ行動の法的責任をはっきり問うことです。もうひとつは、どんな条件がその人をより危険にしたのかを明らかにすることです。責任と理解は、互いに反対のことではありません。

どんな条件が危険を大きくしたのかを見ずに、あらゆる暴力を生まれつきの悪さのせいにばかりすると、暴力を前もって防ぐ機会を逃します。児童虐待を減らし、行動の問題を見せる子どもを早く見守り、依存症や心の健康の問題を治療し、繰り返される脅しに割って入って止めることは、危険を下げることができます。けれども、このように治療や介入で危険が下がりうるからといって、被害者が暴力をふるった人との関係を続けなければならないわけではありません。

傷が人の未来を決めないのなら、まず何を見るべきなのでしょうか?

大きな傷を負った人でも、安全な関係や治療、自分自身の選択を通して、違う人生をつくっていくことができます。ですから、「傷ついた子どもの中に犯罪者が潜んでいる」といった言い方は、正確でもなく、役にも立ちません。私たちが人を見るときに問うべきなのは、その人が本来いい人か悪い人かではありません。その人が実際にした行動、いまどれほど危険なのか、自分の責任を受け入れているのかを見る必要があります。

暴力が起きたのなら、加害者の事情よりも被害者の安全が先です。加害者を理解することが、暴力の危険を小さく見積もろうという意味になってはいけません。加害者を理解することは、何が危険を大きくしたのかを正しく知って、同じ被害が繰り返されないよう防ぐために使われるべきです。


執筆:金亨根(キム・ヒョングン)——ソウル依存症心理研究所 所長、現代精神分析教育院 院長。対象関係論にもとづく心理療法家、そしてスーパーバイザーとして、臨床と教育に携わって26年になります。ご相談は相談掲示板へ。

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